本日2投目です。1投目は上からどうぞ。
今週のお題「会いたい人」
Dhrupadは現存する北インド古典音楽の中で最も古い形式を保っている音楽です。私はこのスタイルを主に勉強してきたわけではないのですが、DhrupadのAlapという即興部分が非常に好きで、ムンバイの彼の家にほぼ毎週1度ですが泊まり込みで3年半通ってきました。
このビデオの中でChintanはラーガ Bhimpalasという午後の早い時間のラーガを歌っています。私の最も好きなラーガの一つでもあるこのラーガは、私の印象ではどこか悲しみを乗り越えた力強さとそれに付随するような美しさが溢れて来るラーガです。
Sringara (Sanskrit: शृङ्गार, śṛṅgāra) is one of the nine rasas, usually translated as erotic love, romantic love, or as attraction or beauty. Rasa means "flavour", and the theory of rasa is the primary concept behind classical Indian arts including theatre, music, dance, poetry, and sculpture.
伝統的には、ラーガBhimpalasはSringaraというラサに分類され、恋や惹きつけられる磁力のような魅力や美を象徴するようです。
私見ですがDhrupadは演奏者が最も1音に向き合う音楽です。もはや通奏音を奏でるタンプーラの果たす役割はインド古典音楽演奏者の間でもかつてほど重要視されなくなってきましたが、タンプーラの音と自分の出す音に常に向き合うことがまだ大切なこととして意識されているのがDhrupadというスタイルだからこそ、1音に向き合う音楽と言えるのかもしれません。
私にとってChintanの元でのDhrupadのレッスンは、どんなに自分の感情が荒れていたとしても心が落ち着く不思議な体験でもありました。それはたぶんDhrupadの音楽の性質がただ真摯に音と向き合うことを要求されるからなのかもしれません。
次代のDhrupadを担う逸材のChintanですが、彼の見識はDhrupadに留まらずそれでいて伝統の持つ大切な部分にもぶれがなく、専門であるDhrupad以外の他の音楽の微分音程(半音以下の音程)などを実際に聞いてみたり語ることにも偏見がありません。
コロナが終息したらまたインドの彼の家で音と向き合いたいとそう願っています。